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個人再生

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個人再生

個人再生とは、債務者が返済に困っている場合に、裁判所に「再生計画」の認可決定を受け、債務の一部を免除してもらいながら返済計画を再構築する制度です。
個人再生をしても、かならず返済しなければいけない最低金額のことを「最低弁済額」と言い、条件に従い決定されます。「最低弁済額」については、所有する財産や、債務者の収入や生活費を考慮し、残された返済能力を基に決められます。 また、破産の場合は、原則として財産を手放さなければなりませんが、個人再生の場合は、財産を守ることができます。

※最適な債務整理を判断するには司法書士などの専門家に相談することをお勧めいたします。あくまで目安としてお読みください。

そもそも個人再生とは

個人再生とは?簡単におさらい

個人再生とは、現在の資産や今後の収入ではすべての債務の返済が困難で、このままでは破産・・・という状態の方が、裁判手続によって税金や養育費などの例外を除く、元金部分を含めて借金を大幅に減額してもらい、残った借金については長期(原則3年間)の分割弁済とすることによって個人の経済的更生を図る債務整理の一つです。(特別な事情がある場合には、裁判所の許可をもらって最長5年とすることができます。)
個人再生は、民事再生法という法律に基づいて行います。民事再生法には、大きく分けて通常再生(法人再生)と個人再生の2つが定められています。基本的には、通常再生は法人(企業)が経営破綻し、借入金や債務の返済に困っている場合に適用されます。また、個人再生はサラリーマンやOL、アルバイト、規模の小さな自営業の方などの個人が利用をします。

個人再生を利用できる場合とできない場合

個人再生では、債務が大幅に減額されますが、それでも「支払っていく手続き」です。将来も継続的な安定収入が得られる見込みがある場合にしか利用できず、収入が不定期であったり、そもそも収入がなかったりする場合には利用できません。また、過去に自己破産や個人再生手続きを行った場合、一定期間内は再度の個人再生手続きが制限されることがあります。
この他、債権者の合意が得られない場合や、住宅ローン(この後に説明する住宅資金特別条項を利用する場合)や税金などを除く一般の債務が5000万円を超える場合には個人再生は利用できません(通常再生であれば利用は可能です)。

「小規模個人再生」と「給与所得者再生」

個人再生には、小規模個人再生と給与所得者等再生と呼ばれる2種類の手続きが用意されています。
原則的な個人再生のことを「小規模個人再生」といい、通常の個人再生の特則を「給与所得者等再生」といいます。 小規模個人再生は、将来にわたって継続的または反復して収入を得る見込みがある人が対象で、個人事業主や自営業者などのほか、会社員も利用可能です。小規模個人再生の場合、申立人(再生債務者)が裁判所へ再生計画案を提出した後、債権者(貸主等)の決議を得なければならないとされています。
小規模個人再生の決議は、債務者が債権者との間で提案した返済計画を審議し、債権者が同意するか否かを決定する過程です。債権者は、提案された返済計画に同意するか、もしくは変更を要求する場合があります。このときに、債権者の頭数で過半数、もしくは債権総額の過半数分の債権者が積極的に反対意見を出されたら、小規模個人再生を続けることができなくなります。現実では、大口債権者1~2社の反対で債権総額の過半数分の反対があったため、手続きが続けられなくなるといったことがあります。

なお、ここでいう反対とは積極的な反対や異議があった場合なので、何も意見を言ってこない場合は、賛成したものとして扱われます。一方で給与所得者等再生においては、債権者の意見を聞くことなく手続きを進めることができます。 多くの債権者とトラブルとなっている場合や、小規模個人再生を申し立てたが債権者決議で否定されてしまった場合などに、給与所得者等再生を選択することがあります。
ただ、債権者の意見を聞かない代わりに、小規模個人再生より要件が厳しくなり、最終的な返済額の基準が1つ増えます。法律用語で可処分所得の2年分と言いますが、「可処分所得」は収入から税金等を差し引き、更にその金額から「本人と扶養家族が最低限の生活を維持するために必要な1年分の費用」を控除したものをさします。給与所得者等再生では、この2年分以上を弁済しなければなりません。
これが計算してみると意外に高額になることが多く、手続き後の最終的な返済額が、小規模個人再生の場合より高額となってしまう場合があります。
そのため、小規模個人再生が利用できそうなら、小規模個人再生を利用するのが一般的です。

個人再生のメリット

債務額が大幅に減額される。

個人再生のメリットは、なんと言っても、債務額が大幅に減額になるため、債務者の負担がかなり軽減されることです。 減額についてまとめると以下のようになります。表内の最低弁済額とは法律で定められている最低限返済しなければならない金額のことです。

借金総額最低弁済額
100万円未満借金総額
100万円以上500万円以下100万円
500万円超1,500万円以下借金総額の5分の1
1,500万円超3,000万円以下300万円
3,000万円超5,000万円未満借金総額の10分の1

再生計画案が許可された場合、上記の表からわかる通り、条件が合えば借金を1/5~1/10まで減額でき、3年間~5年間で分割して支払うことが可能になるので、月々の支払い負担は個人再生をする前よりもかなり軽減されることになります。ただし100万円未満の借金は全額返済する必要があるので注意しましょう。

ギャンブルが原因で作った借金も免責の対象となる。

自己破産では、資金繰りが厳しくなった事情として、浪費癖やギャンブル癖がある場合などには免責許可(債務の返済業務を法的になくすという裁判所の許可)されず、債務整理ができないことがあります。 一方個人再生の場合は、借金を大幅に減らせるだけでなく、借金の理由等は問わないため、こうした事情がある場合でも利用することができる点も大きなメリットです。

マイホームを手放さずに借金を整理できる。

住宅ローンの残っている自宅不動産について、民事再生法が定める条件を充たす方は、住宅ローンだけはこのまま約束通りに返済していき、自宅不動産を維持することができるので、マイホームを手放さずに債務整理をすることができます。これを法律用語で「住宅資金特別条項」と言います。 この定めを利用した再生計画が認可されると、住宅ローンについては今まで通りの条件で支払う必要があるものの、それ以外の債務について減額がされるので、全体としての債務者の負担は軽くなります。

士業や保険外交員、警備員など職業・資格に制限がない。

自己破産を行った場合、手続き期間中は「破産者」という位置付けになり、士業や保険外交員など一定期間の間職務を行うことができない資格や職業がありますが、個人再生ではそのような資格制限が発生しません。

個人再生のデメリット

一般の人には手続きがとても難しく、時間もかかることも。

個人再生は、債務整理の中でも最も難しいと言われており、民事再生法に従って裁判所を利用する手続きのため、厳格な様式が求められ、必要書類も多岐にわたります。特に再生計画(どのくらい借金を圧縮し、どのように返済していくかという計画を記したもの)を立案するには複雑な計算が必要であるなど、法的な専門知識や経験を求められるため、一般の人にはかなりの困難を伴います。
必要な書類は裁判所によって多少異なりますが、一般的に、給与明細、持っている銀行口座すべての1~2年分の履歴、源泉徴収票や課税資料、保険証券と解約返戻金資料、退職金資料などの、財産や収入に関係する資料は必須です。また、毎月家計簿を作成していただく必要がありますし、借金の経緯などもわかりやすく文章でまとめないといけません。
必要な書類は裁判所によって多少異なりますが、一般的に、給与明細、持っている銀行口座すべての1~2年分の履歴、源泉徴収票や課税資料、保険証券と解約返戻金資料、退職金資料などの、財産や収入に関係する資料は必須です。また、毎月家計簿を作成していただく必要がありますし、借金の経緯などもわかりやすく文章でまとめないといけません。
住宅資金特別条項を利用する場合は、住宅ローン・抵当権設定に関する契約書の写し、不動産の登記簿謄本、不動産査定書は最低限必要です。
書類の準備から申立書を作成して裁判所に申し立てをするまで、何ヵ月もかかることも多いです。しかも、申し立てたあとも返済額を確定させたり、債権者から意見を聞いたりするなどに時間がかかるため、それからさらに半年以上かかることも珍しくありません。

手続き自体にかかる費用がある。

個人再生は、ほかの債務整理と比較しても費用が高めになる傾向があります。 司法書士費用の他に、裁判所に納める予納金という手数料がかかります。(司法書士などに依頼する場合は、司法書士費用に含まれていることもあるので確認しましょう)
裁判所や案件によっては、個人再生委員が裁判所から選ばれることがあります。個人再生委員は、個人再生をする人の手続きがスムーズに行われるようにアドバイスをしてくれ、ほとんどの場合は弁護士が選ばれるため、報酬が発生します。裁判所にもよりますが、一般的に15~25万円ほど支払う必要があるケースもあります。

信用情報機関に事故情報として登録される(ブラックリスト)。

個人再生をすると、信用情報機関に事故情報の登録がされます。信用情報機関とは、金融機関やクレジットカード会社、消費者金融会社などの金融機関から提供された信用情報を管理・提供する機関のことです。 この信用情報機関に個人再生をした情報が登録されることで、審査が通らないということが起こります。これがいわゆる「ブラックリストに載る」とか、「ブラックになる」と呼ばれる状態です。個人再生後、ブラックリストに登録される期間は一般的に5~10年程度で、この間は借入れが難しくなります。

官報に掲載される。

個人再生をすると、官報に氏名や住所などが掲載されます。官報とは、政府が発行している新聞のような機関紙ですが、普通の新聞とは違い、一般人で官報を読んでいる方は少数なので、たとえ官報に掲載されたとしても、周囲に個人再生したことを知られる可能性は低いと言えます。官報に掲載される理由の一つとして、債権者に対して異議を唱えられる機会を与えているため、金融機関はチェックしていることが多いです。

保証人がついている借金がある場合は、保証人に影響が出る。

個人再生手続きは全ての借金が対象となるため、保証人がついている借金がある場合は、保証人に請求が行くことになります。また、個人再生手続きにより、500万円の借金を1/5の100万円まで減額が認められたとしても、個人再生の効果は主債務者と債権者との間でのみ生じるため、保証人の責任は1/5にはなりません。基本的には、保証人への影響を避けることはできませんが、任意整理であれば、債務整理の対象となる借金を自由に選択することができます。ただし、任意整理では個人再生のように大幅に借金を減額することはできないため、どの債務整理の方法が最適であるかは、専門家や弁護士に相談したうえで、慎重に判断しましょう。

個人再生のデメリット以外に注意点は?

任意整理と違い、債権者は平等に扱われる。

個人再生では、債権者に納得して債務整理に応じてもらうために「債権者平等の原則」というルールが定められており、債権者はすべて平等に扱われます。例えば、債権者の中に金融機関以外に親族や友人が含まれている場合、「少額でも返済したい」という気持ちになるのではないかと思います。しかし、友人や親族であっても、個人再生の申し立て準備を開始した後は、債権者の一人として平等に扱う必要があります。個人再生をすることにより迷惑をかけたくないからと、親族や友人からの借金だけを返済すると「偏頗弁済」とみなされます。特定の債権者のみ優先して返済する偏頗弁済は、債権者平等の原則に反するため認められません。
もっとも、まったく手段がないわけではありません。迷惑をかけたくない債権者の分を第三者(別居の両親など)から援助を受けて完済した場合は、個人再生に巻き込まなくても済むことがあります。ただし、第三者の援助で支払ったことの証拠をしっかり残しておくなどの注意が必要です。専門知識がないと対応が難しいため、ご自身の判断で勝手に行わず、弁護士などの専門家とよく相談することが大切です。

自己破産と違い、手続き後に支払いが残る。

自己破産では、裁判所に支払い不能であることを認めてもらうことで、原則すべての債務の返済義務が法的になくなりますが、個人再生では減額はされるものの、減額後の金額を支払っていく必要があります。個人再生が裁判所に認められた(再生計画が認可された)としても、そこで終了ではなく、むしろスタートすると考えた方が良いでしょう。

罰金や税金などは減らない。

個人再生の手続きをしても、あらゆる債務が減額になるわけではありません。法律で、普通の借金などよりも取り立てが優先されているお金の支払い義務のことを「一般優先債権」といい、個人再生手続きの対象外となっています。具体的には、刑事罰の罰金や税金、公的年金、公的国民健康保険料などの、国や自治体に納める債務の多くはそのまま支払っていく必要があります。 また、養育費などの扶養義務に関する債務も減額にはなりません。交通事故の人身の損害賠償債務、犯罪被害者への弁償債務も減額にならないことが一般的です。「一般優先債権」は「債権者平等の原則」の例外となり、手続き中でも請求があれば支払わなければなりません。いったん他の債務と同様に圧縮された金額を分割払いしていき、計画通りに支払い終わったあとに、残りの金額を支払っていくことになります。

手続きが裁判所に認められないことがある。

すでにご説明したように、個人再生を利用する条件を充たさない場合は、裁判所は手続きを認めません。 司法書士に個人再生を依頼した当初は条件を充たしていたが、その後収入が下がったなどの事情変更によって条件を充たさなくなることもあります。

住宅に担保権がついているなど、住宅が保持できない場合がある。

住宅資金特別条項は、住宅ローンを他の債務より優先させて支払うことを法律で認めることになりますから、利用には少し厳しい条件があり、住宅ローンがあれば必ずしも利用できるわけではありません。このような優先を認める理由は、住宅が国民生活の上でとても重要なものであるからと考えると分かりやすいでしょう。その条件とは、住宅の不動産に住宅ローン以外の債務の担保権(抵当権)がついていないことです。住宅には、住宅ローンの債権者である銀行等の金融機関や保証会社の抵当権が設定されているはずです。しかし、住宅ローン以外の借金について、住宅に抵当権や根抵当権などの担保権が設定されている場合は、住宅資金特別条項を利用しても、その他の担保権の実行により住宅が競売にかけられてしまい、これでは住宅資金特別条項の意味がなくなってしまうからです。
他にも住宅に関係のないローンがある場合には利用できないことがあります。住宅の「建設」・「購入」・「増改築・リフォーム」の費用として借り入れたローンだけが対象となり(火災保険料や登記費用などの住宅購入に密接に関係する費用が入っていても大丈夫な場合もあります)、例えば自動車購入資金が含まれている場合には、住宅を特別扱いする理由から外れてしまいますので、住宅資金特別条項を利用できないことがあります。

返済額があがることがある。

個人再生は、3~5年間、債権者を手続きに付き合わせていることになります。債権者の中には、安い金額を長い期間で支払ってもらうより、破産してもらって、額は少なくてもすぐに手に入ったほうが良いと考えるところもあるでしょう。こういった債権者側の考えを保護するため、個人再生においては、今すぐ自己破産したときに債権者に配当される金額(これを「清算価値」と言います)よりも、多くのお金を個人再生では返さないといけないという制度があります。これを法律用語で、清算価値保証原則と言います。
そのため、現金や預金だけでなく、退職金や保険の解約返戻金、自動車や住宅などの資産次第では、返済額が非常に大きくなる恐れがあります。例えば、負債額だけで見ると、負債総額が1000万円であれば、5分の1の200万円を支払えば済むということになります。しかし、株を持っていてその価値が300万円だった場合、自己破産すると300万円全額が処分される可能性が高いです。このため、個人再生においては300万円を分割で支払わないといけないということになります。この清算価値でもっとも怖いのが、住宅ローンがアンダーローンになっているときです。例えば、住宅ローンの残りが1000万円であるのに、住宅の査定価値が1500万円だった場合、500万円を分割で支払わないといけないことになるのです。また、こういった返済額は足し算されていきます。つまり、株300万円と住宅アンダーローン500万円の場合、800万円を分割で支払わないといけないことになるのです。この清算価値保証原則により、個人再生でも支払いが高額すぎて、支払っていくことができないという方もいらっしゃいます。 また、債務総額には、裁判所で個人再生を進めることを許可する決定(手続開始決定)までの遅延損害金も付加されます。書類収集に時間がかかり、想定以上に決定まで時間がかかってしまった場合には、その分返済額が上がってしまうこともあるのです。

個人再生を検討する前に確認しよう

転・退職の予定や退職金の予定額。

すでにご説明したように、個人再生が認められるかどうかで一番重要なのが「継続的な返済が見込める収入があるか」ということになります。転職をして間もないと、今後継続的な返済が見込める収入があるかどうか、判断材料が少なくなるため、見込みがないと裁判所に判断されてしまうリスクが上がることがあります。同じ理由で、退職して無職になっている間も、当然ですが個人再生は利用できません。もし個人再生の利用を検討しているならば、安易な転職や退職は控え、慎重に考えるようにしてください。 また、退職金予定額は、すでに説明した清算価値に加算されることがあるので、正確な金額を把握しておく必要があります。

個人再生のタイミング(認可決定時)清算価値として計上される退職金の割合
退職金受領後退職金全額
退職予定・退職後受領前退職金見込額の1/4
退職予定がない退職金見込額の1/8

実際に受け取る前の退職金は、4分の3が法律で差押えを禁止されており、そのため退職予定でまだ退職金を受け取っていない場合は、退職金の4分の1の金額が清算価値に加算されることになります。また、退職予定がない場合には、まだまだ受け取ることができるのは先だということで、多くの裁判所が半分に減額評価をしてくれます。このため、8分の1の金額だけが清算価値に加算されることになります。具体的には、現在の退職金が800万円の場合、すでに受け取っていた場合は基本的に800万円全額、退職予定だがまだ受け取っていない場合は200万円、退職予定がない場合は100万円が清算価値に加算されることになります。金額にかなりの差が出ますので、 退職金が高額の場合は、退職時期を慎重に判断する必要があります。

他の債務整理の方法は検討しましたか?

基本的な考え方として、個人再生は、自己破産を利用できない、もしくはしたくないという方や、住宅を維持したまま債務整理をしたい方などが利用する手続きです。自己破産も個人再生もどちらも選択できる場合は、借金が原則としてすべて帳消しになる自己破産をしたほうが、将来の負担なく生活再建をすることができます。もっとも、「どうしても自己破産はしたくない」と考えて、個人再生を選択される方も少なくありませんので、素直に司法書士への依頼時に相談してみてください。 また、住宅を維持することができる債務整理手続きには、他に任意整理があります。この場合は、任意整理の対象とする借金を選ぶことができ、保証人に迷惑がかかることを防いだり、ローン支払い中の財産を維持することも可能なので、司法書士に希望を相談してみてください。

個人再生がお勧めの方

任意整理に応じにくい債権者がある場合

任意整理は、債権者との交渉で和解条件を決めます。任意整理に応じるかどうかは債権者が決めることなので、初めから任意整理に応じない姿勢を取られると交渉のしようがありません。以前は細かい聞き取りをせずに簡単に「将来利息を免除して5年払い」というような和解ができていた会社でも、最近では、取引期間が短い場合など、なかなかこちらの希望する和解に応じてもらえないケースが増えてきています。また、会社の方針で「任意整理に応じない」と決めている債権者も存在します。任意整理は、債権者がこちらの希望する和解条件に応じてもらえない限り、強制的に和解をまとめることはできないのです。 個人再生は、裁判所に提出した再生計画が認可されると、法律の規定に基づき強制的に債務が減ることになります。債権者は再生計画の決議に反対をすることはできますが、過半数の反対がない限り再生は認可となりますので、債権額の少ない債権者が1社2社反対しても、関係なく再生は認可されることになります。
したがって、任意整理に応じない債権者がある場合には、法律の効果によって強制的に債務を減らす手続きである個人再生のほうがおすすめです。

将来の状況変化に対応する場合

個人再生で減額された借金の返済期間は、原則「3年間」と法律上で定められています。これに対して任意整理は、裁判所を介することなく、直接債権者と交渉して返済期間を決めます。
任意整理の場合、返済期間を長くすることで月々の返済額を減らし、和解を目指すことが一般的です。しかし、返済期間を長期にすることで、毎月の返済額を減らすことができるというメリットがある一方で、将来の状況の変化によって返済が困難になる可能性が高くなるというデメリットもあります。
したがって、高齢の方や将来の収入が不安定な場合など、状況の変化によって返済が困難になってしまうリスクを減らすためには、個人再生を選ぶことがおすすめです。個人再生では、返済期間が任意整理よりも短くなりますので、完済することがより確実になります。

給与差し押さえなどを受けている場合

個人再生を選ぶと、個人再生手続きが開始されると同時に差し押さえ手続きが停止されます。
その結果、給与差し押さえなどの取り立てが中止され、手続きが完了した後に差し押さえされた給料を一括で受け取ることができます。一方、任意整理ではこのような効果はありませんので、差し押さえが継続され、債権者は任意整理に応じることを拒む可能性が高いです。したがって、すでに給与差し押さえなどを受けている場合は、任意整理よりも個人再生がより有効な選択肢となります。

個人再生が難しい方

ひと口に「個人再生できない」といっても、大まかに分けると以下の2つのパターンが考えられます。

1.個人再生が出来ない、向かない場合

一つ目のパターンは、個人再生の手続き自体が利用できない、または不向きな場合です。 債務や資産状況などによって、法律上や実際上の事情から個人再生ができないことや不向きである場合があるのです。

2.手続きが失敗に終わる場合

二つ目のパターンは、個人再生手続きそのものは利用できるが、最終的に債務整理の目的を達成できない場合です。つまり、手続きを進めても、裁判所が再生計画を認めないような状況です。ここでは、個人再生手続きが不向きな場合についてご説明いたします。

個人再生ができない・不向きな5つのケース

個人再生は非常に有効な債務整理方法ですが、全てのケースに適用できるわけではありません。債務者の事情や状況によっては、個人再生手続きができない場合や不適切とされる場合があります。 例えば、以下のような場合には、裁判所に個人再生を申し立てたとしても棄却されてしまいます。

  1. 個人再生の利用条件を満たしていない場合
  2. 債務額が100万円未満の場合
  3. 住宅ローンを除いて債務総額が5,000万円以上ある場合
  4. 定期的な収入がない場合
  5. 財産が多すぎる場合

しかし、このような場合でも他の債務整理方法が考えられます。
例えば、「自己破産」や「任意整理」などがあります。ご相談いただければ、最適な債務整理方法をご案内することができます、お気軽にお問い合わせください。

個人再生のよくあるご質問

個人再生はどういった手続きですか?

個人再生は原則的に借金を5分の1に圧縮して、それを3年で分割返済する代わりに、残りの借金の支払い義務をなくしてもらう手続きです。
なお、借金を5分の1にした金額が100万円を下回る場合には、最低でも100万円は返済しなければいけないという決まりがあります。
また、本人が100万円を超える財産を所有している場合は、最低でも所有する財産の額以上は返済しなければならず、これを「清算価値保障の原則」といいます。
よって、本人の財産の合計額が借金を5分の1にした額もしくは最低返済額の100万円を上回っている場合には、最低でも所有する財産の額以上は返済しなければいけないということになります。
また、住宅ローンを返済中の場合は、住宅ローンの返済はそのまま続けますが、それ以外の借金を5分の1に圧縮することで、自宅を手放さずに借金を整理することができます。
例えば、住宅ローン以外に500万円の借金があっても、100万円に圧縮できるので、個人再生をすることで住宅ローン以外の返済を毎月3万円弱に減らすことができます。
もちろん、住宅ローンがない場合でも個人再生を利用することができます。
また、ギャンブルや浪費が原因であっても、個人再生では借入れをした原因が問われないので、自己破産の免責不許可事由に該当する事情があるような場合には、自己破産よりも個人再生が適している場合があります。

小規模個人再生と給与所得者等再生の違いは?

小規模個人再生は債権者の過半数以上が反対すると認められないです。
サラリーマンや公務員などは給与所得者等再生と小規模個人再生のどちらでも利用することができます。
これに対して、自営業者は給与所得者等再生を利用することはできず、小規模個人再生しか利用することはできません。 小規模個人再生の特徴の一つに、債権者の過半数以上が反対した場合は認められないという決まりがあります。ただし、実際に反対してくる債権者はほとんどいません。
これに対し、給与所得者等再生では可処分所得要件がある代わりに、債権者の意向は問われません。 サラリーマンなどの給与所得者であっても、可処分所得要件によって返済額が大きくなってしまう場合は、給与所得者等再生ではなく、あえて小規模個人再生を選択することは珍しくありません。
そのような事情から、実務上も圧倒的に小規模個人再生を利用するほうが多いです。

<可処分所得要件とは>
再生計画における弁済総額が、1年間あたりの手取収入額から最低限度の生活を維持するために必要な1年分の費用(最低生活費)を控除した額の2倍以上であること

無職でも個人再生できますか?

個人再生の要件の一つに、継続して安定した収入がありますが、無職では安定収入があるとはいえないので、個人再生はできません。
よって、専業主婦の借金を会社員の夫の収入で個人再生することはできません。ただし、無職でも年金受給者であれば個人再生が認められる可能性はあります。
なお、アルバイトやパート、派遣社員であっても、継続して安定した収入が見込めるのであれば個人再生が認可される場合があります。
よって、専業主婦が新たにパートを始めた場合は、得られる収入の額によっては個人再生が認められる可能性があります。

自宅や車は手放すことになりますか?

自宅は手放さずに済むが、ローン中の車は引き上げられることになります。
いまだ住宅ローンを返済中であれば、個人再生をすることで自宅を手放さずに借金を整理することができる場合があります。 これに対して、すでに住宅ローンの返済が終了していたり、住宅ローンの残額よりも自宅の査定価格の方が大幅に高い場合は、清算価値保障の原則により、再生計画における返済額が大きくなってしまうので、現実的に個人再生を選択することができません。
また、車を手放すかどうかは自動車ローンの有無によって異なります。すでにローンが終わっているのであれば、車は完全に自分の所有物となるので処分の対象になりません。
これに対して、いまだ返済中の場合は、ローンの返済が完了するまでは車の所有権がローン会社に留保されるという所有権留保特約によって、車はローン会社に持っていかれてしまうのが原則です。

すでに任意整理をしていても個人再生できますか?

任意整理をした後でも個人再生をすることができます。
借金の返済に行き詰まり、司法書士に任意整理をお願いして、その後しばらくは返済を続けていたが、何らかの事情により再び返済が滞ってしまうことは珍しいことではありません。
過去に任意整理をしたような経緯があっても個人再生できるのか気になるところですが、この点については全く問題ありません。
つまり、再生計画で予定される借金を返済できるだけの安定収入があるのであれば、たとえ過去に任意整理がダメになったような経緯があっても、個人再生をすることは可能というわけです。
実務上においても、過去に任意整理をしたものの、何らかの理由によって返済が厳しくなってしまい、あとから個人再生に切り替えることがあります。

自己破産と個人再生のどちらを選択すればいいですか?

最終的には本人の意思を最優先とします。
住宅ローンがあって、なんとしても自宅を手放したくない場合は個人再生を選択することになりますが、それ以外の場合は本人の意向を最大限尊重したうえで、自己破産か個人再生のいずれを選択するかを決定します。
確かに個人再生は借金を大幅に圧縮してくれるので、多額の借金を背負っている場合は非常に有効な手続きといえますが、本人に特に目ぼしい財産がない場合にまで、あえて個人再生をするメリットがあるのかというと、ほとんどないのが現実です。 なぜなら、自己破産をせずに個人再生をして最低返済額である100万円を3年かけて返済したからといって、本人には特にメリットがあるわけではないからです。
しかし、借入れをした原因がギャンブルや浪費であるなど、本人に自己破産の免責不許可事由が存在する場合は、積極的に個人再生を選択すべきと考えられます 。
また、裁判官の中には個人再生をすることができるだけの安定収入があるのであれば、倫理的な観点から自己破産ではなく個人再生を選択すべきという考えの方もいますし、なにより本人が借りたお金は少しでも返したいと思っているのであれば、個人再生を選択すべきと思われます。
これに対して、自己破産をしてゼロからやり直したいという本人の気持ちが強いのであれば、無理に個人再生を選択するべきではないと思われます。
よって、最終的には免責不許可事由の有無や本人の意向や収入などを考慮して方針を決定することになります。

報酬の支払いはどうすればいいですか?

債権者の返済を止めている間に分割でお支払い頂きます。
個人再生のご依頼をお受けした場合、すべての債権者に受任通知を送って請求を止めて、その間に報酬を分割でお支払い頂くことになります。
当事務所へのお支払いは、今後個人再生で返済していけるかどうかのテストも兼ねているので、毎月のお支払い金額は、個人再生が認可された場合に予想される毎月の返済金額と同程度以上に設定しています。
なお、債権者の返済が再開するのは、ご依頼をお受けしてからおよそ1年後となります。
これは、ご依頼から裁判所への提出までに3~4ヵ月、裁判所への申し立てから再生計画の認可決定まで約6ヵ月、認可決定から初回の返済まで3ヵ月かかるためです。
よって、分割で報酬のお支払いをする時間は十分にありますのでご安心ください。

実費はどのくらいかかりますか?

15万~25万円かかります。
個人再生の場合、裁判所が再生委員を選任するのが原則です。この再生委員の費用として15万~25万円かかるのですが、各裁判所によって金額が異なります。
当事務所がある千葉地裁管轄では、住宅ローンがある場合は約20万円、住宅ローンがない場合は約15万円となっています。 再生委員の報酬については、原則的には分割払いでも大丈夫な場合が多いですが、こちらも裁判所によって異なります。 分割払いの場合、再生委員の口座への毎月の振り込み金額は、再生計画が認可され場合に予想される毎月の返済額と同程度に設定され、履行テストといわれています。
履行テストはの結果は、裁判所が再生計画を認可する際の重要な判断材料となります。 再生委員の費用のほかに収入印紙が1万円、官報掲載費用と切手代で約1万5000円かかります。よって、再生委員が選任されなければ実費は約2万5000円で済むことになります。
なお、実際に再生委員が選任されるかどうかについては各地の裁判所によって運用が異なります。

個人再生のデメリットはなんですか?

信用情報がブラックになること以外は特に日常生活に大きな支障はないでしょう。
個人再生をした場合、信用情報機関に事故情報が掲載されるので、いわゆるブラックリストに載ってしまいます。
ただし、借金の返済が2~3ヵ月滞ればブラックになるので、個人再生が直接の原因とはいえません。
なお、ブラックになった場合は5~10年はクレジットカードが使えなくなったり、銀行などから融資を受けることができなくなります。
個人再生は自己破産と異なり、自分の財産が処分されることはありませんし、一定の仕事に就けなくなるような資格制限もありません。
なお、官報には載りますが、戸籍や住民票には一切影響ありませんので、周りに知られる心配もまずありません。また、ギャンブルや浪費による借金でも借入原因が問われることはありません。
よって、個人再生をしても日常生活に特段の支障はないといえます。

自分で個人再生の手続きをおこなうことはできますか?

自力で手続きを行うことも可能ですが、法律の知識などがなければ複雑な手続きをすべて一人で進めるのは容易ではないでしょう。
個人再生は債務整理の手続きの中で最も複雑な手続きです。
同じく裁判所に申し立てをする自己破産と比べても、個人再生には専門知識と経験が求められます。そのため、司法書士などの専門家の中でも個人再生を取り扱っていない事務所があります。
よって、一般の方がいざ自分一人で個人再生の手続きを進めようと思っても、現実的にまず無理といえます。
また、司法書士に依頼をした場合、すぐに債権者からの請求が止まるので、その点からも専門家にお願いしたほうがよいといえます。

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